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5年分の資料、加熱炉関連11設備、1,212件の不良記録をもとに、設備間の関係と確認・対応の順序を構造化した事例をご紹介します。
※ 資料件数・設備数は対象範囲を示すものであり、停止時間や故障率の削減効果を示す数値ではありません。
Background
製造現場では、設備トラブルや不良が発生したとき、「まず何を確認すべきか」「どこから見ればよいか」を素早く判断できるかどうかが、現場対応の質を大きく左右します。
特に加熱炉のように、複数の関連設備が相互に影響し合う現場では、一つの現象だけを見ても原因がすぐに分からず、経験のある担当者でも一つずつ確認しながら切り分けていく必要があります。
今回ご紹介するのは、加熱炉関連設備の現場において、5年分にわたる使用履歴や問題分析資料をもとに、複雑な設備関係を整理し、現場で使える判断知識へと変換した事例です。
Challenge
今回の現場では、長年にわたり比較的詳細な記録が蓄積されていました。使用履歴、問題分析、不良記録など、現場にとって重要な情報がしっかり残されていたこと自体、非常に価値のある状態でした。
一方で、現場が本当に困るのは、資料があることと、その資料を現場判断にすぐ使えることが別問題である点です。実際には、次のような課題がありました。
つまり、情報は蓄積されているのに、現場で即座に活かせる形には整理されていないという状態でした。
Approach
今回、私たちはこの現場に対して、既存資料を単に検索可能にするのではなく、設備間の関係と判断の流れそのものを整理することに重点を置きました。
対象となったのは、11台の関連設備。さらに、過去に蓄積された1,212件の不良記録を含む資料群を整理し、現場で再利用できる知識基盤へと構造化しました。整理の中心に置いたのは、現場で本当に必要とされる次の流れです。
What we did
AI-FTA というと、故障解析や原因整理の仕組みとして理解されることが多いですが、今回のような現場で本当に重要なのは、長年蓄積された複雑な情報を、設備関係と現場判断の流れに沿って使える形に変えることです。今回の取り組みでは、以下のような整理を行いました。
加熱炉を中心とした11台の関連設備について、どの設備がどの設備に影響しうるのか、異常がどのように波及しやすいのかを見える化しました。
1,212件の不良記録や関連資料を整理し、過去の知見を単なる保存情報ではなく、今後も再利用できる知識として扱える状態に近づけました。
現象から原因候補、確認項目、対応順序へとつながる流れを整理し、現場で「まず何を見るべきか」が分かりやすい形を目指しました。

Value
この事例は、5年分の詳細な資料が存在していたことも重要な要素でした。しかし、それ以上に大きいのは、その多くて複雑な情報を、現場で使える判断知識へ変換できたことにあります。
これは簡単なことではありません。資料が長期間にわたるほど、記録の粒度や表現は揃っておらず、設備との関係性も複雑になり、単なる検索や一覧化だけでは現場で役に立つ形にはなりません。
だからこそ、私たちが提供できる価値は、「資料を集めること」でも「検索できるようにすること」でもなく、複雑な現場情報を、現場の判断に使える形へと整理・構造化することにあります。
Beyond
今回の事例は加熱炉関連設備の現場でしたが、このアプローチは加熱炉に限りません。たとえば、次のような現場でも同じ課題があります。
こうした現場では、多くの場合すでに何らかの資料や記録が存在しています。必要なのは、ゼロから新しい情報を作ることではなく、今ある情報を、現場が使える順番と関係性で整理し直すことです。
Summary
現場で起きるトラブルに対して、経験のある人がすぐに勘所を押さえられるのは大きな強みです。ただ、その判断が個人の中だけに留まってしまうと、人が変わったとき、組織として同じ対応力を維持することは難しくなります。
今回のような取り組みは、過去の記録と現場の知見を整理し、現場判断を個人の経験から組織の知識へと変えていくための土台になります。それは単なる業務効率化ではなく、現場力そのものを将来に向けて残していくことでもあります。
資料が多いこと自体が価値なのではなく、その資料を現場で使える判断知識へ変換できることが本当の価値です。
本記事は、資料と設備の関係、確認・対応の順序を整理した取り組みの紹介です。記載の資料件数・設備数は対象範囲を示すものであり、停止時間や故障率の削減効果を示す数値ではありません。
AI-FTAは、AIが過去の記録から仮説を提案し、計算エンジンがモデルと条件に基づいて試算し、人が根拠を確認して判断するための取り組みです。原因候補と確認済みの事実を区別しながら分析を進めます。